アナログメーター中核部品! ピボットの製造技術の転用可能性について

■ ピボットとは何か?
ピボット(Pivot※以下、ピボットで統一)とは、アナログメーター(電気指示計器)の最重要部品であり、その名称は同時にメーターの製造方式を示す用語としても用いられます。ピボット方式は、アナログメーター(電気指示計器)の指針を動かすために用いられる一般的なメカニズムのひとつで、ピボット自体は指針を正確かつスムーズに動かすための軸受けとして機能し、計器全体の精度や耐久性に直接影響を及ぼします。その形状は、先端が鋭く尖った微細な針状で、全長は約1.5mm~4mm、先端の半径(R)は約0.01~0.02、径は約0.5mmとなっており、製品の仕様により変わり、その寸法パターンは多岐に渡ります。また、ピボットという名称の他には「尖頭針」や「尖針」とも呼ばれることがあり、これらの名称の方により馴染みがある方もいらっしゃるかもしれません。

 この微細な加工部品ピボットの製造工程ですが、まずは複数の専用設備にてこの微細な部品の形状加工を行い、次にこちらもやはり専用設備を用いて表面処理(めっき)を実施します。各工程では非常に高度な技能が要求され、最終的な製品の品質と信頼性を支える重要なプロセスとなっています。

■ 藤田電機製作所の技術紹介
ピボットの製造工程について、精密な加工技術を解説させていただきます。
ピボットは、5つの重要な工程を経て高品質な製品へと仕上げられます。まず、表面を美しく滑らかに仕上げる「バフ研磨」から始まり、エッジ部分を丁寧に加工する「面取り加工」へと進みます。


続いて、精密な「尖頭加工」により先端部分を成形し、「先端R加工」で適切な曲率を持たせます。最後に「メッキ加工」を施すことで、耐久性と美しい外観を実現しています。


これらの工程は、熟練の技術者による緻密な作業と厳格な品質管理のもとで行われ、各工程で細かな検査を実施することで、高い精度と信頼性を確保しています。特に先端部分の加工では、ミクロン単位の精度が要求され、最新の加工技術と職人の技が融合することで、求められる品質基準を満たしています。このような入念な製造工程を経ることで、ピボットは高い性能と優れた耐久性を備えた製品として、お客様の様々なニーズにお応えしています。

■ ピボットの役割
1. アナログメーター(指示電気計器)のスムーズな動きを実現する
ピボットは、アナログメーターの指針を支持しながら、摩擦を最小限に抑える役割を果たします。これにより、測定値が正確に表示されます。

2. 高精度の維持
アナログメーターでは非常に小さな電気信号や物理的な変化を検出するため、ピボットが正確であることが必要不可欠になります。アナログメーターの測定精度は、ピボットの性能に大きく依存しており、軸がわずかにでもブレると、測定結果に誤差を生む可能性があります。

3. 耐久性と安定性
ピボットは長期間の使用に耐える強度と、振動や衝撃に耐えられる安定性が求められます。一般的には硬化された金属で作られることが多いです。ピボットの摩擦問題は非常に重要で、長期間の使用により、軸や軸受け部が摩耗してしまう可能性があります。この課題に対しては、タングステン等の特殊な高硬度材料や独自の表面処理(めっき)の技術が活用されています。

■ ピボットの製造技術の転用可能性について
このピボットの製造技術は、高精度、小型、耐久性、摩擦軽減といった特徴を持つため、アナログメーター(電気指示計器)の他にも以下のような分野で応用が期待できるのではないかと考えています。

1. 精密計測機器
用途例: 科学研究用の高精度天秤や力学測定装置
精密計測機器は、科学研究などのさまざまな用途で利用されており、その中には高精度な天秤や力学測定装置が含まれています。これらの機器においては、ピボットの摩擦軽減技術や耐久性などが、高精度な計測において不可欠な要素になるのではないかと考えられます。特に、天秤の場合、微量の物質量を正確に測定するためには、ピボットの摩擦を最小限に抑えることが重要です。また、力学測定装置では、耐久性が必要とされる場面が多く、機器の安定性や信頼性を確保するためには、高品質な材料や設計が求められます。

2. 医療機器
用途例: 呼吸器や血液分析装置の内部部品
小型かつ高精度なピボットの機械要素は医療分野での信頼性向上や長寿命化に寄与できる可能性があるのではないかと考えられます。例えば、呼吸器の内部部品に高精度なピボットを組み込むことで、正確な呼吸の制御が可能となり、患者の治療効果を向上させることができるかもしれません。また同様に、血液分析装置においても小型かつ高精度なピボットが使用されることで、迅速かつ正確な検査結果を得ることができる可能性もあると考えます。

3. 時計および精密タイマー
用途例: 高級機械式時計の回転機構や工業用タイマー
時計やタイマーの機構は、ピボットの摩擦軽減技術や精密加工技術が非常に重要です。特に、高級機械式時計は、正確な時間を刻むためには微細な部品同士の摩擦を最小限に抑えることが欠かせません。このため、時計メーカーはピボットや歯車などの部品に対して高度な精密加工技術を駆使し、高い精度を実現しています。また、工業用タイマーも同様に、信頼性の高い計測を行うためには摩擦の影響を排除することが不可欠です。

4. 航空宇宙産業
用途例: 航空計器や小型回転センサー
高信頼性が求められる航空分野では、とりわけ耐久性と精度の高いピボットが役立つのではないかと考えます。先に挙げたタングステン素材のピボットも有効かもしれません。航空分野では高い信頼性が求められるため、耐久性と精度の高いピボットを備えたジャイロセンサーが重要となります。これらのセンサーは、飛行機や宇宙船などの航空機器において姿勢制御や航法システムに活用され、高い安定性と正確性を提供します。特に航空宇宙産業では、極めて厳しい環境条件下での運用が求められるため、信頼性の高いセンサーが必須となります。

5. ロボットおよび自動化機器
用途例: サーボモーターや回転式センサーの可動部品
ロボットでは高精度でスムーズな動作が求められるため、ピボットの技術が適合する可能性があると考えます。ロボットが正確な位置決めや速度制御を行うためには、サーボモーターが正確に指示を受けて動き、回転式センサーが動きの変化を正確に検知し、情報をロボットに伝える必要があります。そのため、これらのピボットを搭載した可動部品は、高い信頼性と精度が求められる分野で重要な役割を果たす可能性があると考えます。

6. 自動車産業
用途例: 車載メーターやセンサー部品
高精度な車載機器やセンサーの内部にピボットを応用することで、性能向上が期待されます。ピボットを活用することで、機器やセンサーの精度や信頼性が向上し、自動車の安全性や快適性を高めることが可能になるのではないかと考えます。さらには、ピボットを導入することで車両の操縦性や制御性も向上し、運転者や乗員の安全を確保する上で重要な役割を果たす可能性があります。

7. 風力発電およびエネルギー機器
用途例: 風速計や回転機構
ピボットの摩擦軽減技術により、精密な風速測定やエネルギー効率の向上が可能になります。ピボットの摩擦軽減技術を活用することで、精密な風速の測定やエネルギー効率の向上が可能になります。特に風速計は、風の強さや風向を正確に測定することで、風力発電装置の設置場所や運転管理に重要な情報を提供することができます。

8. 電子顕微鏡や光学機器
用途例: 精密な焦点調整装置
電子顕微鏡のような高性能な光学機器では、ピボット技術によって装置の安定性や操作性を高めることが重要だと考えます。精密な焦点調整装置は、観察対象の微細な構造や表面の特徴を正確に捉えるために不可欠な機能であり、科学研究や工業分野において幅広く活用される可能性があると考えます。

■ まとめ
現在は主にアナログメーター(電気指示計器)に使用されているピボットですが、当社は、このようなピボット技術は、極微細な加工技術とそれを均一にめっきする技術に支えられた製品であり、上記で考察したように幅広い分野の作業での転用可能性があると考えています。この技術は、長期にわたる試行錯誤の結果、当社が構築してきたものになります。

 この特殊な製造技術を活かすことができる様々な分野を模索しています。お客様がこのような技術を使用したい、または試作品を検討したいというご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。当社は、お客様のニーズに合わせて最適なソリューションを提供するために全力を尽くします。どんな小さな疑問やご要望も、お気軽にお知らせいただければ幸いです。

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